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LOVE カヌチ
『LOVEカヌチ』へのようこそ!                    日記が主流ですが時々、創作SSだったりオリジナルを上げてます。 是非、読んでってくださいね☆
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すいません...

宵山の魔法、じゃなく、祇園の魔法でした。


こちらに来たということは覚悟されたんですね?

本当にいいですか?

吐かないでくださいね?





約140年ほど前の今日、三条である事件があった。
歴史の教科書に出てくる『池田屋事件』。
四条大宮の屯所から宿屋を捜索し祇園祭で賑わうココを通り抜け三条へ。
隊士たちは何を思ってこの人ごみの中を歩き回ったんだろう。

時は平成、祇園祭は今年も賑わっていた。
その中に「祇園祭」を初めて歩く一人の女性。
京都独特の暑さのせいで汗が出て髪を貼りつかせていた。
「暑い、人がいっぱい、動けない~」
周りを見れば人、人、人。
「こ、こんな状況で刀抱えて三条まで歩いたなんて…」
彼女が目指すのはお目当ての鉾ではなく三条の地。
この日のために会社を休み、四条大宮から四条を通り三条まで歩くつもりでいた。
彼女を除く人たちは目当ての鉾の前で記念写真を撮ったり屋台を回ったりお祭りを堪能している。
「やっぱ止めときゃ良かったんかなぁ」
大通りを避けたところで座り込んでしまった。
「あーあ、なんか痛いと思ったら靴擦れや」
カバンから絆創膏を取り出し擦れて水ぶくれになった箇所に貼る。
「ま、これで当分は大丈夫やろ。
 にしてもすごい人やなぁ、ホンマにこんな中歩けたんかな」
彼女が新撰組に興味を持ったのは学生時代。
自由研究で調べてまわったのがきっかけで、社会人になった今でも時々史跡を歩いたり本を読んだりしていた。
「まぁ、今みたいに道路は狭くないやろし地方から来る人だって少ないやろし歩けたのは歩けたんやろうな。
 もう少し歩いて靴擦れ、痛かったら帰ろ」
そう言うと彼女は膝を軽く叩いて腰を上げた。
「お腹、減ったなぁ」
先程より歩くペースを遅くし観光客にまぎれて歩くと自分が空腹であることに気付いた。
「何か食べよっかな」
屋台からは焼きとうもろこしやお好み焼きのいいにおいが漂ってくる。
あれやこれやと歩きながら悩んでいると人とぶつかった。
「あ、すいません」
謝って振り返っても返事はない。
それどころか可愛い浴衣を身にまとい彼氏と腕を組んで歩くほうが嬉しいのか、幸せそうな笑みを浮かべて人ごみへと消えていった。
「いーなー、彼氏」
ふと昨日のことを思い出した。
彼女には同じ職場に気になる男性がいた。
その男性から仕事帰り、祇園祭へ行こうと誘われていた。
その誘いを断って今こうして祭り真っ最中の中にいる。
急に虚しさがよぎった。
「あ、雨だ!」
誰が言い出したのか、ふと空を見上げると青空だった空が黒い雲に覆われ雨を降り出そうとしていた。
やがてポツポツ降っていた雨粒が勢いを増して地面を濡らしていた。
祭りを飾っていた鉾たちにはビニールを被せられ、見物人たちは傘を差したり屋根のある
所を探して右往左往していた。
彼女も傘を差そうと思えば差せたのだが、今は雨に打たれることのほうが良かった。
「姉ちゃん、雨降ってんで。早よ、ここ入り」
気を利かせたおばちゃんが手招きをするも彼女は首を横に振って自身のゴールへと足を進めた。
今まで熱く日焼けしていたアスファルトが急な水に水蒸気を出し、辺りは熱気でジメジメっとした暑さに変わっていた。
彼女の靴擦れが湿気でまた痛み出し歩きづらくなった頃、また人とぶつかった。
「あ、ごめんなさい」
「いえ」
今度は男の人の声で返事が返ってきた。
ふと振り返ると祭りの法被にしては鮮やかな水色をしていた。
袖口は白く、黄色い紐が背中でバツを描いていた。
「不思議な格好の人がいるのね」
向き直って、ふと立ち止まる。
「袖口が白で、水色?あれは、法被じゃなくて羽織り?
 じゃ、あの人って!!」
突然の雨で傘の花が咲く中、彼女は来た道を走って戻りさっきすれ違った人を探した。
靴擦れは走ることで痛みを増したが、構ってなどいられなかった。
人にぶつかっては謝り、こけそうになりながらも必死に探した。
「いるはず、ないのに」
息も絶え絶えになりながら人の流れをさかのぼる。
やがて水色の影が見えてグッと掴んだ。
顔を上げると知らない男性が驚いた顔をしていた。
「な、何?」
「あ、すいません、人違いでした」
「あぁ、そう」
そう言うと男性は人の流れに乗るように消えていった。
また彼女は一人きりになった。

脇道へと入り靴擦れを確認する。
貼った絆創膏からはうっすらと血が滲んでいた。
痛いのを我慢して新しい絆創膏に貼りかえるとすぐに立ち上がり駅へと向かおうと歩き出した。
「濡れちゃうよ?」
背後から男の人の声がして振り返るとさっきすれ違った水色羽織りの男性が立っていた。
「だれ?」
彼女が聞くと男は黙って人ごみへ消えようとしていた。
「待って!」
彼女は再び人の流れに逆らい走り始めた。
今度は先程とは違い、見失うことはなかった。
というより、見失えば視界の端に現れて追いかければ逃げる。
また見失えば現れて追いかければ逃げる、の繰り返しだった。
いつしか雨も上がり、鉾や人が再び賑わい始めた。
「追いかけたら逃げるのに、何で立ち止まったら待ってるん?」
息が上がり呼吸を整えようと立ち止まったら彼も立ち止まる。
「よしっ!」
再び追いかけるとまた逃げられる。
どこかに誘っているのか、ただ単に遊ばれているのか分からないが、だんだん彼女は楽しくなってきていた。
しばらく見失わずに追いかけていると、急に彼は走る速度を落とし、ついには立ち止まった。
それを追うように彼女も速度を落とし歩いて近付くと、彼は逃げたりしなかい。
ただ一点を見つめる彼の目線に合わせると、目の前に彼女自身のゴール【池田屋跡地】があった。
「必死で走ってたから気付かんかったけど、いつの間にか着いてたんや」

走って疲れていたのかしばらくボーっとしていると聞きなれた声がした。
「あれ?」
振り返ると気になっている男性がそこに立っていた。
「え、あ、こんばんは」
「あ、こんばんは。やなくて、何でここにおるん?
 確か風邪って聞いてたのに」
「あ、いや、えっと…」
手を握ろうと力を入れた時、やわらかい布が指先に触れた。
見るといつの間にか手の中に腕章のようなものが入っていた。
「それ、新撰組隊士の腕章やね」
「え!そうなん?」
「うん、何かで読んだ。
 俺、新撰組好きやからそういうことには詳しいねん。
 それより、今日仕事サボったな!?」
そう言うとその人は持っていた傘の柄で彼女の頭を軽く小突く。
「痛い!!ごめんなさい!!」

それから2人は祇園祭を堪能した。
話題はお祭りではなく新撰組の話ばかりだったが、2人とも幸せそうな笑顔を浮かべた。

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